ステロイド外用剤について

当院ではアトピー性皮膚炎をはじめとする湿疹病変の治療には、基本的に、日本皮膚科学会も推奨するステロイド外用剤を用いた標準的治療を行っております。

しかし、世間一般には「ステロイド外用剤は怖い、ステロイド外用剤を使ったらアトピー性皮膚炎がさらに悪化する」などと思い込んでおられる方がいまだにたくさんおられるようです。

こういう思い込みを多くの方が持ってしまうに至った原因は1990年代前半に、ある報道番組で「ステロイド外用剤によってアトピー性皮膚炎がさらに悪化する」などと大々的に報道がなされたことにあります。

そういう報道がなされた理由は、当時、一部の皮膚科医が「ステロイド外用剤を使用することによって、アトピー性皮膚炎がさらに悪化する」とか「軽度の湿疹にステロイド外用剤を塗り続けることによって本格的なアトピー性皮膚炎が引き起こされる」などと主張したからなのです。

しかし、炎症を抑えるお薬であるはずのステロイド外用剤が、皮膚の慢性炎症性疾患であるアトピー性皮膚炎を引き起こしたり悪化させたりするなどということは理論的にありえないことなのです。

また、ステロイド外用剤を用いると、(1)全身の免疫力が下がる、(2)子供が産めなくなる、(3)塗った部位に色素沈着が起こる、(4)皮膚がぶ厚くなって汚くなる、などという噂を本気で信じている方を多く見かけますが、これらの心配も全く必要ありません。

ひとつづつ説明しましょう。

まず(1)についてですが、これはステロイド剤を大量内服したときにおこることであって、ステロイド外用剤を医師の指示通りに用いている限りは絶対に起こり得ないことです。そもそもステロイド外用剤は全身的な副作用をおこさず、皮膚にだけ作用させるように開発されたものなのです。

(2)についてですが、これも何の根拠もない噂にすぎません。実際、妊婦さんでもステロイド外用剤は用いても問題ありません。

(3)と(4)については、これは湿疹病変を十分に治療せずにいた場合にみられてくる症状であって、ステロイドの副作用ではありません。ステロイド外用剤を過剰に怖がり、必要な強さの薬を必要量きっちり使わないからこのような症状が出てくるのです。

また、「ステロイド外用剤を塗ったところは日光にあててはいけないのですか？」という質問をよく受けるのですが、「ステロイドを塗ったところを日光にあててはいけない」のではありません。湿疹をはじめとする炎症性皮膚疾患がある部分は全て、ステロイドを用いた用いないにかかわらず、日光には当てないほうがよいのです。炎症のある部位を日光にあてると炎症後色素沈着が強く出てしまう可能性があるからです。ステロイドが色素沈着を引き起こすのではありません。